2022年12月28日

小熊英二『日本という国』


中学生以上を対象とした「よりみちパン!セ」シリーズの1冊。2018年に「決定版」が出ているのだが、今回読んだのは2006年初版のもの。

全体が二部構成になっていて、「明治時代」と「第二次世界大戦後」という二つの時期が取り上げられている。どちらも日本という国のあり方を方向づけた重要な時期であり、日本の現在や今後を考える際にも欠かすことのできない論点を含んでいる。

日本の近代化は、国民全体に西洋文明の教育をゆきわたらせながら、同時に政府や天皇への忠誠心をやしなうという方向で進んでいった。
講和条約と同時に日米安全保障条約を結び、アメリカ占領軍は「駐留軍」とか「在日米軍」と名前を変えただけで、日本にあった米軍基地といっしょに居残ることになった。
日本政府は、アジアの民間からの補償要求には「国家間で解決済み」といいながら、自国民が被害をこうむったシベリア抑留問題では、「国民個人の請求権は放棄していない」と表明したわけだ。

中学生でも理解できる平易な文章で書かれているが、内容は十分に深くて濃い。

2006年3月30日、理論社、1200円。

posted by 松村正直 at 12:59| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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