2022年12月13日

吉田篤弘『なにごともなく、晴天。』


2013年に毎日新聞社より刊行された旧版に書き下ろしを加えた増補版。装幀・装画はクラフト・エヴィング商會。

鉄道の高架下の商店街を舞台に、古道具屋の店番をする主人公と、様々な住人たちが織り成す連作短編集。章題が「食べる。」「眠る。」「考える。」「隠す。」「泣く」など、すべて動詞になっているのが面白い。

私は神も仏も信じないが、ただひとつ、祖母がよく口ずさんでいた「お天道様は見ているから」のお天道様を信じていた。それゆえ、空をめぐるあれこれを憎めない。
この歳になって銭湯に通ってみると、そこは思いがけず賑やかなところで、その賑やかさも、裸になっているせいか、ひとつも嘘がなかった。
おいしいものというのは、たいていの場合、手間ひまがかかっていて、そのうえ、何かしらを思い出させる。昔のことや、遠いところや、ずいぶん会ってないひとや(…)

小説を読むのは久しぶりだったけれど、何だか少し元気になった。

2020年11月20日、平凡社、1800円。

posted by 松村正直 at 11:14| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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