2022年12月07日

平出奔歌集『了解』

著者 : 平出奔
短歌研究社
発売日 : 2022-10-25

2020年に「Victim」30首で短歌研究新人賞を受賞した作者の第1歌集。「塔」「えいしょ」「半夏生の会」「のど笛」所属。

うん……までは言った記憶が残ってる喫茶店、チェーンじゃないどこか
着るだけで痩せるって書いてあったのを着ながら想う日本の未来
本名で仕事をやっていることがたまに不思議になる夜勤明け
おみやげは人数に足りないほうがみんなよろこぶような気がした
水・日でやってるポイント5倍デー そのどちらかで買うヨーグルト
差し出したポイントカードがここじゃないほうので ちょっと笑ってもらう
Amazonで2巻と3巻を買ってメールでおすすめされる1巻
洗濯が自動で終わる 乾燥も 生きてる意味がわからなくなる
夕立が  泣く、って涙が出てるってことじゃないじゃん  屋根を打ってる
いつかあなたの目の前でやって見せたいよ涎の出るような眠り方

1首目、別れ話だろうか。周辺の部分は消えてしまった記憶の感じ。
2首目、右肩上がりの時代とは異なる現代の空気感がよく出ている。
3首目、本名も数あるハンドルネームなどの名前の一つに過ぎない。
4首目、もらえる人ともらえない人に分かれると、もらいたくなる。
5首目、ヨーグルトを買う点に限れば水曜日と日曜日は等価である。
6首目、レジの人が笑ってくれたので、ミスを救われた気分になる。
7首目、当然1巻は持っているのにAIにはそれがわからないのか?
8首目、自分がいなくても洗濯物は仕上がるし、社会も回っていく。
9首目、挿入句の上下二字アケ。悲しくても涙が出ないことはある。
10首目、無防備な姿を相手の前にさらけ出すことのできる関係性。

2022年11月1日、短歌研究社、1700円。

posted by 松村正直 at 21:11| Comment(0) | 歌集・歌書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。