2022年11月16日

短歌と人間

小池光の歌集『サーベルと燕』に、こんな歌がある。

勝ちが見えれば指が震へる人間羽生四十九歳になりてをりたり

25歳で将棋界の7つのタイトルを独占し、今では永世七冠の資格を有する羽生善治九段。そんな天才もまたAIとは違う「人間」であって、勝ちを意識すると駒を持つ指が震えるというのだ。

勝ちを読み切った際の羽生の指の震えは、将棋ファンにはおなじみの話。この歌が印象的だったのは、小池が同じく羽生について以前こんな歌を詠んでいるからである。

「将棋に人生を持ち込むと甘くなる」羽生善治言へりわれら頷く/『静物』(2000年)

約20年経て詠まれた二つの歌を比較すると、小池の短歌に対する考えの変化を窺うことができる。小池の歌集にはこんなふうに、かつての歌とつながる歌が数多く潜んでいる。

posted by 松村正直 at 08:53| Comment(0) | 短歌入門 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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