2022年10月30日

松葉登美『群言堂の根のある暮らし』


写真:山口規子。
副題は「しあわせな田舎 石見銀山から」。

石見銀山のある島根県大田市大森町で、ファッションや雑貨のブランド「群言堂」や、古民家宿「他郷阿部家」を運営する著者が、土地に根差した暮らしの魅力について記した本。

古い家の修復をしながら、わたしたち夫婦が強く思うようになったのは、「世の中が捨てたものを拾おう」ということでした。都会では経済性や効率性が優先されますが、わたしたちはあえて非効率なことやものを大切にしようと考えました。
手を動かし、手を汚してこそ、わたしのものづくりはできるのだと考えています。机の前でじっと考えているだけでは、決してよいものは生まれません。
一〇〇%でやろうとすると、お客さまも期待をするでしょう。そうすると、期待に応えようとして不自然な部分が出てきたり、しんどくなったり、考えがかたくなったりすると思うのです。
ものづくりというのは、どんなものでも最後には天にゆだねるような部分があります。私自身も、自分がつくる服は、七、八割方の完成度で市場に送り出すという気持ちでやってきました。

作者の周りには、夫の松葉大吉、中国人留学生の姚和平、彫刻家の吉田正純、職人の楫谷稔、藍染め研究家の加藤エイミー、刺繍家の望月真理、染織家の滝沢久仁子など、多くの人たちが集まってくる。

人を惹きつけ、人と人をつなぐ力こそ、作者の一番の持ち味なのかもしれない。

2009年9月1日第1刷、2016年12月26日第4刷。
家の光協会、1524円。

posted by 松村正直 at 22:24| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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