副題は「下り坂ニッポンの生き方」。
劇作家・演出家で『下り坂をそろそろと下る』を書いた平田と、『デフレの正体』『里山資本主義』などの著書のある藻谷との対談集。
国語の近代化、統一は、スピードの違いはあれ、どの近代国家も経てきた道のりです。ただ、国家が成熟した段階になると、今度は生物多様性と一緒でいろいろな価値観を持った人がいたほうが組織は長生きする。(平田)
東京に住んでいる人は職場の沿線に住むんだけれど、地方は車社会なんで、職場から三〇分圏内ならばどこに住んでも同じです。本当に地方では若い世代が住む自治体を選ぶ時代になっています。(平田)
東京は世界最大の町ですが、若者が自分たちの半分の子どもしか残せない町になってしまっているという点で、生物学的に失敗しているのです。(藻谷)
私はよく演劇教育を導入する先生方に「おとなしい子に無理して声を出させないでいいですよ」と言います。おとなしい子は「おとなしい子」っていう役を演じたら一番うまいんです。(平田)
私はこれまで全国で五〇〇〇回以上講演してきたのですが、毎日が「分からない人に分かるように伝えるにはどうするか」を探求する戦いであり、「話というのはいかに伝わらないものか」を痛感する敗北でもありました。(藻谷)
会社も、短歌結社も、自治体も、そして個人も、ただ漫然と続けているだけでは生き残っていけない。明らかにそういう時代になってきている。
それはもちろん大変ではあるのだけれど、一方で、工夫しがいのある、さまざまな可能性のある時代だとも言えるかもしれない。
2017年9月25日、毎日新聞出版、1000円。