路上生活の実態を探るべく、2021年7月23日から2か月間、東京でホームレス生活を体験してみたルポルタージュ。「東京都庁下」「新宿駅西口地下」「上野駅前」「上野公園」「隅田川高架下」「荒川河川敷」の6か所での暮らしが描かれている。
ホームレスと話をするときは「夏と冬どちらが辛いか」と質問をするようにしたのだが、ほぼ全員が「夏のほうが辛い」と答えるのだ。その理由はやはり、「冬はNPOやボランティアが防寒具をくれるから」だ。
共に過ごす相手次第で生活の色は大きく変わる。それは普段いる社会においてもホームレスの世界においても同じである。
――炊き出しを求めて路上生活者たちが長蛇の列を――。
みたいな文言をよく新聞やニュースで目にするが、私が見た限りでは「メニューと場所を見比べて魅力的な炊き出しに食べに行っている」といった状態だ。
何となくホームレスは孤立しているというイメージを持っていたのだが、実際には仲間同士の情報交換や食料の分け合いもあれば、NPOやボランティア団体による炊き出しなどの支援もある。そうした、人と人とのやり取りが本書の多くを占めている。
もちろん、2か月の潜入取材ですべてがわかるはずもなく、こうした手法を批判的に見る人もいるだろう。でも、ホームレス自身の多くは表現手段を持っていないので、彼らの姿を伝えるという意味で貴重な記録だと思った。
2021年12月27日、KADOKAWA、1500円。