初めて訪れた場所で味わう食べ物を描いた小説のアンソロジー。
「アミの会」は実力派女性作家集団≠ナ、さまざまなアンソロジーを刊行しているようだ。本書では、坂木司、松尾由美、近藤史恵、松村比呂美、篠田真由美、永嶋恵美、図子慧の7名が執筆している。
登場する舞台と食べ物は、「下田のキンメコロッケ」「台湾のパイナップルケーキ」「オランダのニシン、フライドポテト」「糸島の塩むすび」「箱館のコーヒー」「サハリンのシベリア風水餃子」「松山の鯛茶漬け」など。
箱館(函館)とサハリンが入っているのを見て購入。どちらも懐かしい場所だ。
箱館の市電は現在二系統だけが残されていて、東の終点は『湯の川』、西は『どつく前』、途中『十字街』で分岐して、南端『谷地頭』が終着になる。
サハリンはとても風光明媚な場所だった。道端に咲く花も、なだらかな山並みも、曇りがちの空でさえもきれいだった。何より、食べた料理の何もかもがおいしかった。
引用していて気が付いたのだけど、函館の市電の停留場名は「函館どつく前」と、「つ」が大きい。これは、「函館どつく株式会社」という社名の「つ」が大きいかららしい。
http://www.hakodate-dock.co.jp/jp/
1896年創立の古い会社だが、「函館船渠」「函館ドック」という社名を経て、現在の「函館どつく」になったのは1984年のこと。老舗ならではの旧かなっぽさを出しているのだろうか。
2022年7月25日、角川文庫、720円。