2022年10月19日

成田龍一『大正デモクラシー』


シリーズ日本近現代史C。

大正デモクラシーの概要や評価がよくわかる一冊。「大正デモクラシー」という言葉は大正時代だけでなく、「日露戦争後の一九〇五年ころから、一九三一年九月の「満州事変」前夜までのほぼ四半世紀」を指すのだそうだ。

民本主義の議論は、帝国の根幹にふれるところまでには及んでいない。大日本帝国憲法の壁とともに、帝国意識が大きく立ちはだかっている。そもそも、民本主義の基礎をなす立憲主義の出発点は、「内に立憲主義、外に帝国主義」を唱えるところにあった。
民本主義の歴史的な評価が揺らぐのは、内政的には自由主義を主張しているが、それが国権主義と結びつき、対外的には植民地領有や膨張主義などを容認し、帝国とのきっぱりとした態度がとりにくいためである。

このあたりに、大正デモクラシーを支えた思想である「民本主義」の柔軟性と弱さが潜んでいたのだろう。

孫文は、一九二四年一一月に、神戸で「大亜細亜問題」と題した講演を行い、ヨーロッパの「覇道文化」とアジアの「王道文化」を対比し、日本は双方を有しているとした。そして、孫文は西洋の覇道の「番犬」となるか、東洋の王道の「干城」」となるかを問いつめた。

結果論になるけれど、このあたりに歴史の分岐点があったのかもしれない。もし1945年の敗戦へ至る道とは違う道に進んでいたら、その後の日本は、そして今の日本はどうなっていたのだろうか。

2007年4月20日第1刷、2021年8月16日第17刷。
岩波新書、860円。

posted by 松村正直 at 19:00| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。