2022年10月05日

米原万里『旅行者の朝食』


2002年に文藝春秋社より刊行された単行本の文庫化。

ロシア語や翻訳や食べ物に関する37篇を収めたエッセイ集。世界各地の文化や歴史のことがあれこれ出てきて、ひたすら面白い。

ヨーロッパ文明圏の言語と日本語を取り持つ通訳者たちが最も恐れていることの一つに、スピーカーがいつギリシャ語やラテン語の慣用句や有名な詩の一節を原文のまま口にするか予測不可能ということがある。
トルストイの『戦争と平和』であれ、ツルゲーネフの『貴族の巣』であれ、十九世紀ロシアの貴族社会を描いた小説を読むと、地の文はロシア語なのに、作中人物たちの会話がしばしばフランス語の原文のまま載っている。
(『ちびくろサンボ』の)原作は、パンケーキとなっているが、ナンをイギリス人の原作者はパンケーキと言い表し、それを日本語に翻訳する際にポピュラーなホットケーキに超訳したのだろう。虎のバターも、実は原作では、インド料理でよく使うギーとなっている。
(正餐式に)酸味のあるパンを用いるか、カトリック教会で一般的だった酸味のないパンを用いるかをめぐって、十一世紀半ばには激論が東西教会間で交わされているのだ。教皇レオ九世が、「正餐で酸味のあるパンを用いてはならない」と断を下したことによって、ビザンチンの正教会本部は、カトリックと袂を分かつしかなくなった。

この人の本は、もっと読んでみよう。

2004年10月10日第1刷、2021年12月5日第26刷。
文春文庫、600円。
posted by 松村正直 at 23:00| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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