副題は「われ山の美とともにあり」。
主に吉田博『高山の美を語る』から引いた文章と、吉田の絵画を取り合わせて編集した画文集。
いつも一(ひと)元気で一気に描くことにしている。その方が時間をかけて綿密に描くものよりもはるかに力がある。
それから、これは純粋な山ではないが、私は瀬戸内海の島々が好きである。瀬戸内海からいえば、島とはつまり山だということになるが、これ等の諸々がいずれも素晴らしい特異な展望美を備えている。
ヒマラヤは、丁度九州の端から北海道の端までの長さぐらいの連山である。幅も丁度日本内地の幅に略々等しい。
文章からは吉田の山に対する愛情がよく伝わってくる。
「渓流」「モレーン湖」「マッターホルン/マタホルン山」「風景(ダージリン)/ダージリンの朝」など、油彩と版画の両方で同じ場面を描いた作品もあるが、両者の印象はずいぶん違う。油彩が暗くて荒々しいのに対して、版画は明るくて穏やかだ。
肉筆浮世絵と浮世絵版画(錦絵)の違いに似ている。
吉田は福岡県久留米市で生まれ、福岡県浮羽郡(現うきは市)で育った関係で、福岡県立美術館や福岡市美術館に作品が多く収蔵されているようだ。
2017年9月20日、東京美術、2000円。