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死臭より淡いけれども枕から漂いのぼるわれの匂いが
氾濫の収まりしのちの萎れたる川を見ており鴉とともに
言いたくて言えないことの百日紅のどから伸びて両目をやぶる
殺処分の囲いのなかに犬たちは交尾しており声を荒げて
弁当の蓋につきたる米粒のたましいなんて空疎なことば
この庭の奥にトイレがあることを知ってる、初めての店なのに
若き日の映画ふたたび見ることの増えて初秋の雲のあかるさ
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一昨年、24年間在籍した短歌結社を退会し、日常の作品発表の場がなくなってしまいましたので、月に1度のペースでブログに歌を載せています。「て」の話、おもしろいですね。坂井さんが高野公彦と佐藤佐太郎の歌を引いて書かれた文章をあらためて読み直しました。短歌ではよく、「て」でつなぐと説明的になりやすいと批判されることもあるのですが、使い方次第で奥深いものにもなるということでしょう。