2022年08月28日

小出裕章『日本のエネルギー、これからどうすればいいの?』


「中学生の質問箱」シリーズの1冊。

原子力の専門家である著者が、2011年の福島第1原発の事故を踏まえて、エネルギー問題についてわかりやすく論じている。

原発事故が起きてから原発について論じるようになった人は多いが、著者は1970年代からずっと反原発の運動や発信を続けてきた。そこが何よりも信頼の置けるところだと思う。

 日本では、「核」と言えば軍事利用で、「原子力」と言えば平和利用であるかのように宣伝されてきました。英語では同じニュクリア(Nuclear)でも、
「ニュクリア・ウェポン(Nuclear Weapon)」は「核兵器」
「ニュクリア・パワー・プラント(Nuclear Power Plant)」は「原子力発電所」
と訳されます。
国と巨大原子力産業、電力会社は、彼らの論理で原子力を進め、原子力から恩恵を受けない国の人々、弱い立場におかれた労働者や立地住民たち、そういう人々をブルドーザーでつぶすように苦しめてきました。だから私は原子力に反対して抵抗してきました。
エネルギーの問題は原子力をやめればいい、ということではないのです。エネルギーの使い方そのものが問題で、それは世界の構造そのものの問題であって、最終的に言ってしまえば、どうやって生きることが幸せなのかというそれぞれのひとの人生観の問題です。

著者は単に原発に反対しているのではない。エネルギーの大量消費の上に成り立っている現代の暮らしのあり方や、先進国と発展途上国、都市部と農村部との格差がもたらす差別や抑圧、非民主的な物事の決定方法といったものに、異議を唱えているのである。

その一つの現れとして原発の問題がある。だから、原発にどう対応するかという話は、私たちが暮らす日本の社会をどのようにしていくかという話でもあるのだ。

2012年5月28日第1刷、2022年5月14日第2刷。
平凡社、1200円。
posted by 松村正直 at 23:18| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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