文・構成:小原真史。
副題は「無人カメラがとらえた日本の自然」。
無人カメラを使った動物撮影など50年にわたって写真家として活動してきた著者が、キュレーターの小原を相手に、写真のこと、動物のこと、森のことなどについて語る一冊。含蓄に富む話が多く、ぐいぐい引き込まれる。
オリジナルな写真は、オリジナルの機材からってことですね。既製品だけに頼っていたら、その範囲内で撮れる写真になってしまうし、どうしてもほかと似てきてしまう。
小屋の壁面に撮りたいフクロウの姿を描いた絵コンテを貼っておいて、その通り撮れたら剝がしていき、全部なくなったときに撮影が終了しました。
加齢臭は人間特有のものではなくて、子育てを終えた個体、つまり自然界では役割を終えた動物から「弱いぞ」とか「さらっていって下さい」というサインが加齢臭のかたちで出ている。
人間だって「万物の霊長」と言えど、死んでしまえばいとも簡単に食われてしまう。僕はお互いに食い合うことも「共生」の意味だと思っています。
忍び足をする必要のない植物食の動物は、足が蹄になっていて、狩りをする肉食動物には、消音効果のある肉球のクッションがあるってわけです。
新幹線は、短い時間で何十キロメートルという距離を移動しながら風景を見せてくれるから、森の作りや樹木の成長の様子を遠見することができてすごく面白いですね。
動物を撮った写真も数多く掲載されているが、そこに写る動物たちの生き生きとして姿に驚かされる。こんな写真が撮れるのか!という感じだ。
長年にわたって観察を続け、機材を改良し、動物の行動や森の生態に詳しくなって初めて撮れる写真ばかり。そこから、著者の哲学とも言うべき思考や思想も生まれている。
2021年9月5日、亜紀書房、1800円。