2022年07月18日

三浦英之『帰れない村』


副題は「福島県浪江町「DASH村」の10年」。

TOKIOが農業体験をするテレビの人気番組「DASH村」の舞台であった福島県浪江町津島地区(旧津島村)。現在も帰還困難地区(原則立入禁止)となったまま、約1400名の住民の誰ひとり帰れない状態が続く。

この本は2017年秋から2021年春にかけて、津島地区と住民百数十人に取材して、それぞれの思いを聞き取ったルポルタージュである。

国の説明会で「一〇〇年は帰れない」と言われて集落の記録誌を作った人、満蒙開拓団からの引き揚げに続いて再び家を追われた人、伝統芸能「田植え踊り」を何とか残そうと道具を新調した人、屋外での炊き出しを子どもに手伝ってもらったことを後悔し続ける人。

原発事故が一人一人の人生に与えた傷の大きさをあらためて感じる。

津島地区は原発から20キロ以上離れているため、当初、浪江町の住民の避難場所となった。けれども、実際には放射性物質は風に乗って北西に流れ、この区を広範囲にわたって汚染していたのであった。

かつての「DASH村」の今の様子は、2021年にテレビ放映された。
https://www.ntv.co.jp/dash/articles/65tqkaubaj266r2cbw.html

2022年1月25日、集英社文庫、620円。

posted by 松村正直 at 09:09| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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