(ウラジオストクを歩いて)車は日本の中古車が多く、「カンガルー宅配便」とか「寿し幸」「今日も笑顔と挨拶で」など日本語が車体に大書してある。日本語ってカッコ良く見えるからそのままにしてるの?「いや、消すのにヒマとお金がかかるから」というのがアリョーナの愉快な答であった。
(北方領土問題について)「これは地理の問題ではなく、政治の問題よ。昔、どこの国の領土だったかとか、誰が住んでいたかでなく、一九五六年の共同宣言でカタがついているはず。いくら歯舞・色丹が日本に近くても、あそこで長いこと魚をとっているロシア人がいる以上、政府は返すわけないわ。それにロシアは他の国ともいくつも国境を接しているから、あそこを返したら、他の国もあれ返せ、これ返せといってくるしね(…)」
(シベリア抑留について)「日本人が戦後も長く抑留されたのは気の毒だが、この前の戦争でロシアは勝った側なのに二千万人以上も死んだんだ。とくにベラルーシからモスクワの間では、ドイツ軍のせいで町の人口の九十パーセントが死んだ町もある。そのことも知ってくれ(…)」
どれもロシアの人々の考え方がわかって興味深い。別にこうした意見に賛同するわけではないのだが、相手の言い分をきちんと知っておくことは大切だ。
特に国と国の争いにおいては、報道でも自国の言い分だけが伝えられることが多いので、双方の意見をまずは知った上で考えを深めていく必要があると思う。