2022年07月08日
青年団「ソウル市民」
兵庫県豊岡市の江原河畔劇場へ青年団第94回公演「ソウル市民」を観に行く。作・演出:平田オリザ。
1989年初演で現代口語演劇の出発点となった作品だが、見るのは今回が初めて。
舞台は日韓併合の前年にあたる1909年夏のソウル。商店を経営する日本人一家の一日を通じて、植民地支配の構造を描き出している。
家族、使用人、朝鮮人の使用人、近所に住む夫婦など、多くの人物が登場するが、会話の内容や挨拶の仕方、椅子に座るかどうかといったことで、それぞれの関係や身分などが自然と理解できるようになっている。
人の話し方や話す内容といったものは、実は相手との関係性によって決まっているのだということがよくわかる。
文学談議の中で、雑誌「スバル」掲載の石川啄木の短歌も出てきたのには驚いた。〈この頃は絶交状をふところに入れておく故わが心安し〉という一首。歌集には載っておらず一般にはあまり知られていない作品だ。
国と国の関係ということではロシアとウクライナの情勢のことも思われるし、この年の秋に暗殺される伊藤博文の話も出てきて、歴史と現在との交錯を感じさせられた。
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