シリーズ第8弾。2019年にKADOKAWAから刊行された単行本の文庫化。
訪問先は、長野(善光寺など)、群馬(慈眼院など)、大分(熊野磨崖仏など)、青森(恐山菩提寺など)、中国四川省(華厳時など)。
1992年から始まったこの仏像見物紀行も、気づけば30年を迎えた。旅する2人だけでなく、読む私もそれだけ年を取ったということだ。
左折し、民家が固まっている狭い山道を抜けると、じきに達磨寺へ到着した。
ゴーンと急に鐘の音がした。
むしろあたりが静かになった気がした。
みうらさんも言った。
「今、すべてが消えた」
「まさに円空。これ、滞在期間長いね」
みうらさんが言った。確かにいわゆる木っ端仏でなく、ある程度腰をすえて作ったものだった。仏像の作りがそのまま円空のいた時間をあらわすというのは慧眼だ。いずれ円空という時間単位になるかもしれない。
2人の名コンビぶりは変わらない。天才みうらの呟きを、いとうが鮮やかに理論化していく。
「道草篇」と名付けただけあって、何と寺や仏像を鑑賞しない回まである!中国四川省のジャイアントパンダ繁殖基地を見物して終わり。
この調子でどんどん自由に続けていってほしい。
2022年4月25日、角川文庫、660円。