関西にあるローカル鉄道を訪れて、その歴史や現状、見どころなどを紹介した本。取り上げられているのは、阪堺電車、水間鉄道、紀州鉄道、和歌山電鐵、近江鉄道、信楽高原鐡道、北条鉄道、神戸電鉄、叡山電車、京都丹後鉄道、京福電鉄の11社。
かつて信楽焼は火鉢の8〜9割のシェアを占めていたそうです。火鉢を含めて信楽焼が産業として発展してきたことから、住民たちから鉄道輸送を望む声が高まります。
なるほど、タヌキの置物ではなく火鉢が主力製品だったわけだ。鉄道を待望する声が大きかったのもよくわかる。
こうした取り組みの背景にあるのが、嵐電が掲げる「沿線深耕」という言葉です。「振興」ではなく「深耕」。地域と鉄道は一体であるという考えに基づき、沿線の資源や良さを深く発掘・再構築し、沿線を住んでみたい、魅力ある地域にするため、鉄道会社として積極的にお手伝いをしていこうという思いが込められています。
ローカル鉄道の場合、こうした地域密着の姿勢を取りやすい。鉄道会社と地元が協力することでWIN-WINの関係を築くことができる。ここが、最近のJR西日本の赤字路線廃止に向けた動きや地元自治体との対立といった話との大きな違いだ。
本格的な人口減少時代に突入した日本で、これから地域に新しい鉄道や路線をつくることは基本的に難しい。そう考えると、今ローカル線が走っている地域は、他の地域が持てない「資源」を持っていると言い換えることもできるのです。
新しいものを作るのではなく、今あるものをどのように有効活用していくか。これはローカル鉄道の話だけでなく、今の日本の社会全般に当て嵌まる問題と言っていい。鉄道は「つなげる力」を持っているという観点も印象的だった。
2020年2月27日、140B、1800円。