アイヌを詠んだ古い歌をいくつか挙げてみよう。
柳田国男の1906(明治39)年の歌(『定本柳田國男集』第26巻)
釧路にて
たまさかにとりてほしたるしらぬか(白糠)のあいぬかこふをぬらす雨かな
(附記)此歌ハ九月六日十勝ノ帯広ヨリ汽車ニノリ午頃白糠ヲ通リシニイト晴レタル日ニテアイヌ共浜ニ下リ水ニ入リテ昆布ヲ引上ゲ砂ノ上ニホセリアクル日帰リノ汽車ハ大雨ナルニ昨日ノ砂ノ上ノ昆布ハサナガラアリ人々可愛サウニ昆布ハクサルベシナドイフヲキヽテカクヨメル也
金子薫園編『凌宵花』(1905年)に収録されている歌
十勝野の夏をかざれる白すみれやさし愛奴(あいぬ)が髪にかざせり
園田巨人
蝦夷酒に紅茄子めでゝ愛奴(あいぬ)らが軍(いくさ)がたりに雪の夜ふけぬ
羅臼山人
愛奴らが蝦夷笛鳴らし山越えぬひとりひとりに馴鹿(となかい)つれて
筒井菫坡『残照』(1908年)
まだまだ調べればいくらでも見つかる感じで、今後が楽しみだ。