副題は「サラリーマンから将棋のプロへ」。
2018年に松田龍平主演で映画化もされている。
プロ棋士養成機関である奨励会を26歳の年齢制限で退会し、プロになる夢を絶たれた著者が、戦後初めてのプロ編入試験に合格して35歳で棋士となるまでの話。
本人の努力はもちろんのこと、両親と二人の兄、小学校の担任の先生、近所に住むライバル、将棋道場の席主、奨励会や棋士の友人など、多くの人の支えや励ましが印象に残る。
昭和45年横浜市生まれの著者と私は同じ年。小学校高学年の時に将棋ブームが訪れる話など、似たような境遇に育ったこともあり共感する部分が多かった。
幼少時に「タオル姫」と呼ばれていたとあり、こんな話が出てくる。
大きなタオルケットを体に巻きつけて、いつもズルズルと引きずって歩いていたからだ。タオルケットには絶対に代わりはきかないお気に入りの一枚があって、外出するときもそれを引きずっていたらしい。
「ライナスの毛布」(安心毛布)だ! 私も全く同じでいつもタオルケットを持ち歩いていた。何とも懐かしい。
2010年2月13日第1刷、2018年8月6日第9刷。
講談社文庫、640円。