2022年05月14日

梶井照陰『限界集落』


副題は「Marginal Village」。

僧侶で写真家である著者が、各地の限界集落の姿を写真と文章で描いたフォトルポルタージュ。

取り上げているのは、新潟県佐渡ヶ島、山梨県芦川、新潟県鹿瀬、熊本県球磨村、長野県栄村、北海道初山別村、山形県西川町、徳島県一宇、東京都檜原村、和歌山県高野町、石川県門前町、京都府五泉町。

旧芦川村は山梨県中部にある僻村である。芦川渓谷に沿って4つの集落が点在し、其処で暮らす人々はこんにゃく芋やほうれん草などを栽培しながら生活している。その集落の一つで、芦川の下流域に鶯宿集落がある。芦川渓谷のX字谷に67戸の民家が立ち並び、斜面に築かれた石積みの美しい集落だ。

「鶯宿」という言葉にピンとくる。山崎方代の〈生れは甲州鶯宿峠(おうしゅくとうげ)に立っているなんじゃもんじゃの股からですよ〉に出てくる地名だ。調べてみると、方代の母がこの鶯宿の出身だったらしい。

「むかしの人は難儀したんだ。お産をしても2週間ぐらいで畑仕事や桑採りにいかねばなんねがった」(…)「最近は生活も楽になったのにな。集落からは若者がいねぐなってしまったハ」
「合併したら村の財政はよくなるって聞いたけどな。合併したらどんどん生活は不自由になりよる」
「以前はこの集落にも大勢の人がいたけどな。今は買い物にくるのは、ひでさんとちよちゃんの2人だけになってしまったな。ほかは足が弱くなって山からおりてこられなくなったりしちまってさ」

集落に暮らすお年寄りの話から、その土地の歴史や産業、生活の様子が浮かび上がってくる。その一言一言が、重く胸に迫る。

2008年2月8日、フォイル、1400円。

posted by 松村正直 at 21:53| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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