本田雅也訳。
副題は「動物たちは何を考えているのか?」
2018年に早川書房より刊行された単行本『動物たちの内なる生活―森林管理官が聴いた野生の声』を改題・文庫化したもの。
リス、ニワトリ、ミツバチ、ノロジカ、ウマ、クマムシなど様々な動物たちについてのエッセイ41篇が収められている。
人間は「目の動物」で、視覚に頼って狩りをする。だから人間に獲物として狙われる動物は、その視界から消えることを目指すことになる。
大人のウサギの寿命は平均して二年半だけれども、序列の違いが寿命の差と連動していることが確認されたのだ。いちばん下位のウサギは、性成熟に入ったあと数週間もしないうちに死ぬ。
では、ヨーロッパアマツバメは? 彼らは止まり木になど、決して止まらないのである。必要以上は一秒たりとも、地面や巣にとどまっていない。眠くなれば、飛びながら寝る。
著者の一貫した興味・関心は、動物にも感情や心があるのかという問題だ。これは現代の科学ではまだ証明できない点も多いのだが、著者は動物たちにも人間と同じ感情や心があると固く信じている。
人間はおもに感情によって動かされているのだから、目の前の相手の感情の動きをとらえてるためのアンテナを私たちだって備えているはずだ。そして、その相手が人間ではなく動物だというだけで、そのアンテナが機能しなくなるわけがあるだろうか?
本書の原題は「Das seelenleben der Tiere」(動物たちの魂の生活)なので、単行本『動物たちの内なる生活』の方が直訳に近い。しかもベストセラーになった「Das geheime Leben der Bäume」(樹木たちの知られざる生活)の続篇だということがわかりやすい。
https://matsutanka.seesaa.net/article/485621898.html
どうして改題したのだろう?
2021年7月15日、ハヤカワノンフィクション文庫、900円。