1882(明治15)年に日本で初めての動物園が上野に誕生して、今年で140年。動物園は大きな曲がり角を迎えている。
当り前のように町に動物園があって、珍しい動物が見られた時代はもう終った。ワシントン条約による輸入制限や余剰動物の取り扱い、希少動物の種の保存、動物福祉の向上、生息域の環境保全など、動物園は様々な問題を抱えている。
ライオンは繁殖が容易で、一度に3頭前後を産む。「赤ちゃん」のうちは人気があるから増やす動物園は多いが、成長すると近親交配や闘争のリスクが出てくる。
ちなみにウェイティングリストができるアシカは、メスに限る。なぜなら、体が大きいオスはショーに使うには危険で、水族館側はオスを望まないためだ。だからオスは、やはり余剰になりやすい。
そもそも動物園から別の場所へと移動させられること自体が、動物にとって負担になる側面もある。動物園動物の診療に携わる獣医師は、「種の保存のためには動物の移動は避けられないが、移動によって健康を損なうリスクがある」と明かす。
つい先日、神戸から岩手へ移送する途中にキリンが死亡したという事故のニュースが流れたばかり。
http://kobe-ojizoo.jp/info/detail/?id=512
今、動物園は存在意義を問われ始めている。それは、動物園の側だけでなく、市民であり観客である私たちの側にも突き付けられた問題なのだ。
2022年3月20日、現代書館、1800円。