副題は「〈善く、生きる〉ための文章塾」。
朝日新聞の記者&ライターで、農業や狩猟もやっている著者が記した文章の書き方指南。
新聞の連載やコラム、著書『アロハで猟師、はじめました』『おいしい資本主義』など、この人の文章はとにかくおもしろい。そして、奥が深い。その文章術が余すことなく述べられている。
https://matsutanka.seesaa.net/article/475827441.html
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読者は、あなたに興味がない。
読者にとって、あなたの書こうとするテーマは、どうでもいい。
冷厳な現実だ。しかしこの現実を認めるところからしか、始まらない。
結論は書き始める前には自分にも分かっていない。そこが、文章を書くことの急所だ。
企画とは、自分自身を知る作業だ。(…)自分で自分の考えていたことに驚く。また、自分で自分を驚かせられないことに、他人である読者が驚くわけがない。
文章を書く人が、本やCD、ライブのチケットにカネを惜しむようになったらおしまいです。音楽で得たカネは、音楽に返す。文学で稼いだら、文学に返す。
文章を書くことの厳しさと楽しさ、そして生活のあり方や生き方にまで話は及ぶ。どの言葉にも、30年以上文章を書いて生きてきた人ならではの説得力がある。
「常套句をなくせ」「感情を文章で説明してはならない」「陳述の力とはなにか。それは究極につづめて言うならば「てにをは」の力なのだ」「スリリングと書かないで、読み手に映画のスリルを伝える」など、短歌の世界に当て嵌まる話もたくさん出てくる。
近藤康太郎、やっぱり面白い。
そう言えば、名前も佐藤佐太郎に似ている!
2020年12月15日初版、2021年11月25日第5刷。
CCCメディアハウス、1500円。