2022年04月13日
山前譲編『文豪たちの妙な話』
副題は「ミステリーアンソロジー」。
文豪の書いたミステリー(っぽい話)を集めたアンソロジー。夏目漱石、森鷗外、芥川龍之介、梶井基次郎、佐藤春夫、谷崎潤一郎、久米正雄、太宰治、横光利一、正宗白鳥の計10篇が収められている。
最後の正宗白鳥「人を殺したが…」(185ページ分)以外は、どれも30ページ未満の短篇ばかり。
別に探偵や刑事が出てきたり、殺人が起きたりしなくても、十分にミステリーになる。登場人物の心理描写を突き詰めていけば、すべての話はミステリーになるのかもしれない。
大塚英志は『文学国語入門』の中で、明治の東京で必要となったツールとして、「言文一致体」「告白」「観察」という3つの手法を挙げている。それはミステリーにも当て嵌まるものだ。
そうした意味で、ミステリーとは近代のものであり、都会のものと言っていいのだろう。
2022年2月20日、河出文庫、890円。
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