2022年04月09日

小泉武夫『北海道を味わう』


副題は「四季折々の「食の王国」」。
北海道の食べものの魅力を四季に分けて紹介した一冊。

著者は北海道農政部アドバイザーとして15年間北海道の農産物のPRに努め、大学を定年退職後は、石狩の研究施設や札幌のマンションと東京を行き来する生活を送っている。

取り上げられるのは、ホッキガイ、ベニズワイガニ、フキノトウ、ギョウジャニンニク、シマエビ、トウモロコシ、ニンジン、メロン、ホッケ、キンキ、タラ、ワカサギ、などなど。

江戸時代には冷凍技術などなかったので、ニシンを乾燥させて身欠ニシンをつくり、それを江差から北前船で京都に運んでいた。そのとき、江差にあった豪商の横山家に伝わるニシン蕎麦のレシピも一緒に伝わっていったというのである。
北海道では、国策で明治時代から綿羊の飼育が盛んとなり、大正時代に入ると国産羊毛自給を目指して「綿羊百万頭計画」が立案され、札幌の月寒や滝川などに種羊場がつくられた。そのような背景があって、やがて食肉用の飼育も盛んになり、次第に羊肉を食べる土地柄になっていったのである。

食べものの味の説明も詳しく、テレビの食レポなどをはるかに凌駕している。例えば、ニシンの刺身についてはこんな感じだ。

口に入れた瞬間、ヤマワサビの快香が鼻から抜けてきて、口の中ではニシンの刺身のポッテリとしたやさしく柔らかい身が歯に応えてホクリ、トロリとし、そこからまろやかなうま味と耽美な甘み、そして脂肪からのペナペナとしたコクなどがジュルジュルと湧き出してくる。それをヤマワサビのツンツンと醤油のうまじょっぱみが囃し立てるものだから、たちまちにして私の大脳皮質の味覚受容器は充満するのであった。

特に、オノマトペが多く使われているのが目に付く。数ページ見ただけでも、「クリクリ」「ムッチリ」「プチュプチュ」「ガツガツ」「プチンプチン」「カチンカチン」「ガブリ」「スルリ」「ピョロロン」「ムシャムシャ」「トロトロ」と、実に多彩である。

2022年3月25日、中公新書、900円。

posted by 松村正直 at 21:14| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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