著者の青山樹左郎という人物もどういう経歴の人物なのか判然としない。当時の樺太アイヌ研究者のなかにそうした人物は見受けられない。
この『樺太アイヌ叢話』という本にはいくつかの謎がある。/まず第一に、千徳と発行所である市光堂市川商店との関係である。(…)また、この市光堂という発行所についても情報がほとんどない。
川村の生年については一八九八年、一九〇二年、一九〇六年と研究者により分かれており、現時点では確定できない。
片平が持っているというバチェラーの遺言状なるものがどのような内容であったのか、またそれが実在していたかどうかについても不明である。
このように、現時点でわかっていることとわかっていないことを、明確に区別して論じている。これは大事なことだろう。
本書を踏まえて今後さらに研究や資料の発掘が進み、新たな事実が判明することもあるにちがいない。