副題は「はかない命の物語」。
2020年に草思社から刊行された単行本の文庫化で、前作『生き物の死にざま』の続篇になる。
ツキノワグマ、ウナギ、ホタル、ウスバキトンボ、カタツムリなど27種の生き物についてのエッセイが収められている。
メスが戻ってきても、オスが死んでしまっていることもある。/オスが待ちわびても、旅の途中で生き倒れたメスが戻ってこないこともある。もし、メスが戻ってこなければ、オスとヒナは、餓えて死ぬしかない。(コウテイペンギン)
「子どもを育てる」ということは、強い生物にだけ与えられた特権である。/哺乳類や、鳥類が子どもを育てるのは、親が子どもを守ることができる強さを持っているということなのである。(カバキコマチグモ)
百獣の王であるライオンの子どもたちは、どうして死んでしまうのだろうか。/その一番の原因は「餓え」である。/弱肉強食とはいっても肉食獣は、簡単に草食獣を捕らえられるわけではない。(チーター)
セミの幼虫が土の中に潜ってから、あたりの風景が一変してしまうこともある。木々が切られてなくなってしまうこともある。土がコンクリートで埋められてしまうこともある。/やっとの思いで土の中から出てきても、羽化するための木が見つからないこともあるのだ。(セミ)
それぞれ、命について、生きること死ぬことについて、考えさせられる内容だ。ただ、前作に比べるとやや教訓的な匂いが強まっている。生物の話としてだけでも十分に面白いので、あまり人生訓に寄り過ぎない方がよいと思うのだけれど。
2022年2月8日、草思社文庫、750円。