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「現代短歌」は隔月刊なので、3月発行分が5月号になる。ちょっとややこしい。
特集「アイヌと短歌」は論考9篇+作品1篇+誌上復刻版『若き同族(ウタリ)に』の計76ページ。質・量ともに本格的なアイヌの特集となっている。
バチェラー八重子、違星北斗、森竹竹市、江口カナメらアイヌの歌人についての論考と、佐佐木信綱、斎藤史、小田観蛍ら和人がアイヌを詠んだ歌に関する論考の両方が載っている。それぞれが有機的につながり、特集全体として話が深まっているように感じた。
オイナカムイ 救主(すくひぬし)なれば ウタリをば 救(すく)はせ給(たま)へ 奇(く)しき能(ちから)に
バチェラー八重子
熊の肉、俺の血になれ肉になれ赤いフイベに塩つけて食ぶ
違星北斗
視察者に珍奇の瞳みはらせて「土人学校」に子等は本読む
森竹竹市
近き日に公園になるアイヌ墓地/朝つゆふめば/心ぬれにし
江口カナメ
佐佐木信綱と松浦武四郎が知り合いだったことや、斎藤史が川村カ子トについての歌を詠んでいることなど、今回の特集で初めて知ったことも多かった。
この特集には、私も「異民族への「興味・関心」と「蔑視・差別」 近代短歌にとってアイヌとは何だったか」という論考を書いた。
特集名の「アイヌと短歌」は「アイヌ」and「短歌」ということではない。「短歌」を通じて「アイヌ」の歴史や差別の問題について考え、「アイヌ」を通じて「短歌」という日本語表現の性質や制約について考えることだと思う。その両面を意識して書いた。
ぜひとも多くの方に読んでほしい。