「図書」2019年10月〜2021年10月に連載された文章をまとめたエッセイ集。
皮膚癌が見つかった話から始まって、正岡子規、夏目漱石、生と死、漢字と概念、東日本大震災、芭蕉、言葉と虚構、ダンテ、忠臣蔵、空海、死後の世界、平家物語、万葉集、天皇制、新型コロナウイルス、大岡信、三島由紀夫、ギリシア神話、丸谷才一と、縦横無尽に話が展開する。
「国のために生きる」という明治の国家主義が、やがて「国のために死ぬ」という昭和の国粋主義に変質してゆく
心という言葉、身体という言葉があるからこそ人間は心と体を分けて認識する。心が体を離れてさまようことも想像できる。現実にはない虚構(フィクション)を生み出す言葉の力によって、人間は心と体を別のものとしてとらえることができるのだ。
『おくのほそ道』は単なる旅の記録、紀行文ではない。芭蕉の心の遍歴を旅に託して書いたのが『おくのほそ道』なのだ。その遍歴を経てつかんだのが「かるみ」という人生観だった。
テンポがよく、歯切れがよく、読みやすい。同意する部分と疑問に思う部分の両方があるが、著者の考えや主張が明快に伝わってくるところがいい。
2022年1月20日、岩波新書、860円。
ですね。取り急ぎ。
訂正しました。