「ブックレット・ボーダーズ」No.6。
ボーダースタディーズ(境界研究・国境学)の第一人者で国境地域研究センターの副理事長も務める著者が、世界各地のボーダーについて記した本。
日本の国境、アメリカとメキシコの国境、ヨーロッパや中東の国境(ドーバー海峡トンネル、ベルファスト、ベルリン、パレスチナ自治区)、中国とロシアの国境、中国と中央アジア諸国との国境など、各地の現場に実際に足を運んだ経験をレポートしている。
境界は変わり、国のかたちは流転する。「固有の」という表現などそもそも土地に当てはまらない。例えば、いまのポーランドはポーランドではなく、かつてのドイツはいまのドイツではない。
国境の暗いイメージを変えたい。対馬・釜山、与那国・花蓮、稚内・サハリンで会議を開催した経験を思い出す。実際に国境を越えてみると発見に満ちている。国境と境界地域の面白さを観光でアピールしたらどうだろうか。こうして始まったのがボーダーツーリズムだった。
世界がボーダーフルであることを前提に、「その敷居を低くし、隣人同士が快適に暮らせるような道筋をつけていく」のが著者の目標である。その実現はまた少し遠ざかってしまったようだけれど。
2019年7月25日、NPO国境地域研究センター、900円。