副題は「那覇市第一牧志公設市場界隈の人々」。
2019年6月から建て替え工事が行われ、2022年4月には新市場がオープンする予定の牧志公設市場。その建て替え前の姿を記録するべく、市場内外の30店舗に取材したノンフィクション。
戦後の闇市から始まった市場の歴史や、沖縄の戦後史、さらには沖縄の食文化や暮らしの姿が浮かび上がってくる。
沖縄の人にとって、山羊は食べ慣れた食材の一つだ。公設市場にも山羊肉店が五、六軒あったが、この十年で次々と閉店してしまって、現在では「上原山羊肉店」だけが残る。山羊を飼う人が少なくなり、山羊肉が高級品になってしまったことが原因だという。
沖縄県は一世帯あたりの鰹節消費量が断トツの一位だ。二〇一六年の調査によれば、全国平均が年間二七六グラムであるのに対して、沖縄はその六・四倍の一七六八グラムである。
古い泡盛を収蔵する博物館&酒屋を営む「バザー屋」を紹介する中で著者は、
今目の前にあるものは、そこにあることが当たり前過ぎて、いつのまにか消え去ってしまう。でも、同時代の人達から変人扱いされる人の手で、時代は記録されてゆく。
と書いている。とても大切な指摘だと思う。これは、名著『ドライブイン探訪』や本書を記した著者自身の姿勢でもあるのだろう。
https://matsutanka.seesaa.net/article/465212751.html
2019年5月25日、本の雑誌社、1850円。