2022年02月03日

芥川龍之介に御馳走した人

芥川龍之介の書簡を読んでいるのだが、いろいろと面白い。1915年8月、芥川は松江の友人宅から東京へ帰る途中に京都に寄っている。

京都では都ホテルの食堂で妙な紳士の御馳走になつた その人は御馳走をしてくれた上に朝飯のサンドウイツチと敷島迄贈つてくれた さうして画の話や文学の話を少しした わかれる時に名をきいたが始めは雲水だと云つて答へない やつとしまひに有合せの紙に北垣静処と書いてくれた「若い者はやつつけるがいゝ 頭でどこ迄もやつつけるがいゝ」と云つた 後で給仕長にきいたら男爵ださうである 四十に近いフロツクを着た背の高い男だつた

この時、芥川は23歳。東京帝国大学の学生である。ホテルで見知らぬ人に御馳走になるという、まるで映画みたいな出来事が起きている。これも時代なのだろうか。

調べてみると、北垣静処は日本画家で本名は確。京都府知事として琵琶湖疏水の建設に当たった北垣国道の長男であった。

posted by 松村正直 at 09:54| Comment(0) | メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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