歴史談義シリーズで知られる著者が、新たに始めた文学談議シリーズの第1弾。
バー「スリーバレー」を舞台に、バーテンダー「ミサキ」と大学教授の「曽根原」、客の「宮田」の間で文学作品についての話が繰り広げられる。
扱われるのは、夏目漱石『こころ』、太宰治『走れメロス』、宮沢賢治『銀河鉄道の夜』、芥川龍之介『藪の中』と、有名な作品ばかり。それを意外な観点から読み解いていく。
「そして読者の読みかたが時には作者さえ意識していなかった作品の真実を探り当てることもあると思っています」
「作者さえ意識していなかった……」
「そうです。作者は何者かに導かれるように書いてしまっていたことを読者が見つける。興奮しませんか?」
こんな感じ。短歌の読みにも似たところがあるかもしれない。
2019年12月13日、創元推理文庫、720円。