大豆畠の
露草は、
露にぬれぬれ、
かわいいな。
大豆畠の
ほそ道を、
小(ち)さいアイヌの
子がひとり。
いろはにほへと
ちりぬるを、
唐黍たべたべ、
おぼえてく。
この年、樺太・北海道を旅行した白秋は、アイヌに関する詩や短歌を数多く詠んでいる。この童謡もその一つ。
「いろはにほへと/ちりぬるを」には、正しくは傍点が付いている。学校帰りの子どもだろうか。トウモロコシを食べながら声に出して言葉を唱えている姿が可愛らしい。
もっとも、別の角度から見れば、これは北海道旧土人保護法に基づいてアイヌ学校が設置され、日本語教育をはじめとした同化政策が行われた時期の作品でもある。
そうした観点に立つと、「いろはにほへと/ちりぬるを」も自ずと違った意味合いを帯びてくる。
白秋はアイヌ語を取り入れた詩や歌も作っているが、はたしてどんな意識でこの「いろはにほへと/ちりぬるを」を書いたのだろうか。
笹の窓から、顔がでる。
月(のの)さま、月さま、/おとおりなされ。
マキリこつこつ、お彫物、/入墨青い、お母さま。
小熊今夜は、腹痛い、/おりでしくしく泣いてるよ。
月さま、月さま、/おとおりなされ。
窓から子どもが、呼んでいる。
作者の木村不二男(1906-1976)は全然知りませんでしたが、秋田県大館市出身、函館市育ちの教師で小説家だったそうです。北海道を題材にした作品が多く、白秋の歌詞があくまでも旅行者目線であるのに対し、木村のほうは、よりアイヌの子供に寄り添っているような気がします。
「赤い鳥」に直しました!いつもご指摘いただき恐縮です。メーテルリンクが混ざってしまったのか、無意識に間違えてしまいました。
木村不二男の「アイヌの子」、確かに白秋のものと比較すると、目線の違いが感じられます。北海道での生活がアイヌに対する深い理解をもたらしたのでしょうね。