副題は「人口400人の石見銀山に若者たちが移住する理由」。
(株)石見銀山生活文化研究所所長で服飾ブランド「群言堂」のデザイナーを務める著者が、島根県大田市大森町での暮らしや町づくりについて記した本。
大森町が重要伝統的建造物群保存地区に指定されたり(1987年)、石見銀山が世界遺産に選定されたり(2007年)する前から、実に40年にわたって夫とともに大森町に店を構え、古民家の改装や移築などを続けてきた方である。
お客さまは、どんなに不便な場所でも、必ずお見えになる。不便だからこそ、その価値が高まることもある。石見銀山に店をおくことが、ブランディングになると考えたのです。
地方は「スモール」「スロー」「シンプル」。小さい世界だから、やったことの答えが見えやすいし、反応がつかみやすい。都会ほど経済的に追われないから、長いスパンで物事を考えていけるし、情報もあふれるほどではないから、自分たちに必要なものが見極めやすいですよね。
足元の宝というけれど、いちばんの足元は自分自身。自分の中の可能性に目覚めて、自分がどう生きたいのか、どうありたいのか、そういうことを一人一人深めていけば、地域の創造力につながると思いますね。
私は「家の声を聴く」「土地の声を聴く」ってよく言いますが、もちろん自分の声はあるけれど、そればかりを中心におくと偏ってしまうので、自分の声は消しておいて、家や土地の声を聴くようにすると、新しいことが発見できたり、聴こえてきたりするんです。
試行錯誤を続けながら実績を残してきた人だけに、一つ一つの言葉に説得力がある。大森町には以前一度行ったことがあるが、また訪れてみたくなった。
https://matsutanka.seesaa.net/article/387138541.html
2021年10月11日、小学館、1500円。