2022年01月10日

平山城児『鷗外「奈良五十首」を読む』


1975年に笠間書院から刊行された『鷗外「奈良五十首」の意味』を改訂、増補して文庫化したもの。森鷗外「奈良五十首」(「明星」1922年1月)に関する詳細な注釈書だ。

鷗外は陸軍軍医総監を退任したのち帝室博物館総長となり、毎年正倉院の宝物の曝涼に立ち会うために奈良を訪れた。その際の歌をまとめたのが「奈良五十首」である。

難解な歌も含まれるその1首1首について、著者は資料に当たるだけでなく、実際に現地を訪れ、関係者の話を聞くなどして、実に細かく調べていく。かなりマニアックな内容と言ってもいい。

その熱意の奥にあるのは、

鷗外の文学活動はあらゆるジャンルにわたっているために、鷗外の短歌は、これまでひどく不遇な位置におかれてきたようである。

という思いであった。

まるでミステリーを読み解くような一冊で、実証的な文学研究の醍醐味を味わうことができる。鷗外の足跡を訪ねて奈良にも行ってみたくなった。

2015年10月25日、中公文庫、1000円。

posted by 松村正直 at 09:06| Comment(0) | 歌集・歌書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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