アスフアルト街
暮れてゆくアスフアルト道下駄に鳴らし鳴るをよろこび子らの遊べり
からころと踏めば鳴り出(づ)るアスフアルト道その音をよみ子ら声立てず
宇都野研『木群』(昭和2年)
今ではアスファルト舗装なんて何の情緒もないけれど、当時は珍しかったから子どもが大喜びしている。
2首目の「音をよみ」がわかりにくかったのだけど、広辞苑で「よむ」を調べると1番目に「数をかぞえる」という意味が出てくる。大伴家持の〈春花のうつろふまでにあひ見ねば月日よみつつ妹待つらむそ〉(万葉集、巻17-3982)や「票をよむ」といった用例が挙がっている。「音をよみ」もその意味かな。
同じ歌集に、長い詞書の付いた舗装工事の歌もある。
アスフアルト工事
今年の夏わが病院の前に最新式のアスフアルト道作られぬ。道路をコンクリートに築きかため、その上に砂礫状の過熱せるアスフアルト混合物を敷き、蒸気ローラーにて挽固むるなり。月余に亘れる工事を見て
黒真砂(くろまさご)くゆりてけぶるアスフアルト一息(ひといき)に圧し潰しローラー廻る
「わが病院の前に最新式の」というあたりが、いかにも誇らしげだ。歌の方も機械文明の力を全面的に謳歌している。
桜咲く国 桜 桜/花は西から 東から/
ここも散りしく アスファルト/桜吹雪に くるう足取り
昭和の初めには、アスファルトは最先端の詞だったんでしょうね。
OSKは今年創立100周年、2月に大阪松竹座で記念公演があるので、よろしければまた観てあげてください(って、何で私が宣伝を・・・汗)。
吉川宏志さんの評論集『風景と実感』でも、昭和初期の佐藤佐太郎の舗道の歌を取り上げて、アスファルトの話が書かれています。
OSKの公演、楽しそうですね。