副題は「北国の小さな本屋が起こした奇跡の物語」。
北海道砂川市で「いわた書店」を営む著者が、「一万円選書」というサービスにたどり着くまでの経緯や書店経営にあり方について記した本。
一万円選書とは、「何歳のときの自分が好きですか?」「これだけはしない、と決めていることはありますか?」「いちばんしたいことは何ですか?」といった質問の記された「選書カルテ」をもとに、書店が約1万円分の本を見繕って届けるシステムだ。
現在は多数の応募者の中から月に100名を選んで選書を行っており、これがいわた書店の経営を支えている。
ネット書店は読者が「これがほしい」というはっきりしたNeedsで検索して本を探しますよね。で、アルゴリズムによって同じような関連本がすすめられる。一方、一万円選書は、あなたはこんな本を求めているんじゃないのって、僕が本人も気づいていないような欲求を汲み取って、ご自身では探せないような本を紹介します。
作者が書いた本は、読者に読まれてはじめて「本」になり「言葉」になる。作者と読者をつなぐために僕は本屋をやっているし、この本の中でもこうして本を紹介しています。
出版業界はどうしても新刊偏重で、書店はいま売れる本をどんどん打っていこうって姿勢になりがちなんだけど、いわた書店では既刊本を長く売っていくことに重きを置いています。
人口1万6千人の町で両親の代から続く書店を守り続ける著者の、信念と気概が伝わってくる一冊であった。
2021年12月6日、ポプラ新書、900円。