「プチトマトのへた取らないでほしかつた」泣くほどに恨まれて母とは
山木礼子『太陽の横』
歌集『太陽の横』には、子育ての日々の具体的な場面がたくさん詠まれている。一つ一つは小さな出来事かもしれないが、それが積み重なり繰り返される日々を思うと、その大変さがよく伝わる。
こうした素材は、例えば育児漫画ではしばしば描かれてきたものだ。
https://conobie.jp/article/10706
この漫画でも「バナナの皮むき」「パンなどを食べやすいサイズにちぎる」「ヨーグルトなどのフタをはがす」といった些細なことが大泣きを招く場面が描かれている。言わば「子育てあるある」なのだ。
けれども、従来の子育ての歌はあまりこうした場面を詠んでこなかった。私自身も含め、短歌はもう少し高尚なものだという漠然とした思い込みがあり、歌を詠む時の構えがあったからだろう。
そうした構えをすべて取っ払ったところに、現代の子育ての歌の切実さと面白さがある。