副題は「鉄道に見る日本近現代史」。
初出は朝日新聞「be」2019年10月〜2021年5月(現在も連載中)。
日本政治思想史を専門とする著者が、自らの趣味である鉄道の話をもとに、近現代史の様々なトピックに迫っている。一篇あたり3ページという短さながら、多くの本やデータを踏まえて中味の濃い話を展開している。
大正から昭和になると、明治天皇の誕生日である一一月三日が「明治節」という祝日になるなど、明治ブームが起こった。文部省は明治天皇が全国各地を回った際に宿泊や休憩のために使った施設を「聖蹟」として顕彰するキャンペーンを始め(…)
なるほど、それで「明治天皇御○○跡」みたいな石碑が全国あちこちにあるのか!
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一九四五(昭和二〇)年八月十七日、会社員の吉沢久子は神田駅でビラが貼られているのを見つけた。そこには「軍ハ陸海軍共ニ健全ナリ、国民ノ後に続クヲ信ズ 宮中尉」と書かれていた。(『吉沢久子、27歳の空襲日記』)
著者は他の例も挙げて「天皇の玉音放送が流れたあとも、なお抗戦を呼びかけるビラが首都圏の駅に貼られていたわけだ」と書く。思い出すのは次の一首。
いつの間に夜の省線にはられたる軍のガリ版を青年が剥ぐ
近藤芳美
『埃吹く街』(1948年)の有名な巻頭歌である。
この総選挙(1946年:松村注)では女性に初めて参政権が認められ、京都府でも三人の女性が当選した。国務大臣だった小林一三は「婦人の当選者の多いのには驚いた、正に世界一だ。米国は下院議員四百三十五名の中、僅かに九名、英国は六百十五名の中二十三名、我国では四百六十何名の中、驚く勿れ、三十九名」と記している。
日本の女性議員の割合が世界一と言われた時代があったとは!
欧米諸国も思いのほか少なかったのだな。
それから75年が過ぎた今、その割合は465名中45名(先月の衆議院選挙の結果)と、ほとんど増えてない。
2021年9月30日、朝日新書、850円。