2018年から2021年までの作品213首を収めた第1歌集。
下記のサイトで販売されている。
https://dainabook.booth.pm/items/3399505
レジュメのことをレジメっていう人なのか遠くの水辺に開くロゼット
チョココロネの中にこころとあることを思う 待つとは膨らますこと
えび 玉ねぎ 枝豆 にんじん なんやかんやあってきれいな季節だったな
引っ越しの日取りを聞いてそれだけで終わる会話の あなたと歩く
バスを待つ少年の手の中でいま春のマリオが崖から落ちる
雪見だいふくだとあまりにふたりで感なのでピノにして君の家に行く 月
一斉に鳩を飛び立たせるように君をぱあってさせたいけれど
たまに胸で泣かれて人は泣くときにすこしその香りをつよくする
なんべんも触って淡くなってゆく牛乳石鹸のように季節は
関係に名前は無くてとおくからとおくへとゆく野焼きの煙
1首目、微妙な違いに隔たりを感じる。上下句の取り合わせがいい。
2首目、言葉遊びとパンの形状からの連想。期待に胸が膨らむ感じ。
3首目、半角空けで表されたかき揚げの彩りを見て、感慨にふける。
4首目、本当はもっと詳しい話を聞きたいのだろう。でも聞けない。
5首目、バス停という日常の現実世界とゲーム機の中の冒険の世界。
6首目、二個入りのアイスだと、恋人の感じが強く出過ぎてしまう。
7首目、元気のない相手を何とか喜ばせたいと思うけれど、無力だ。
8首目「香りをつよくする」がいい。距離の近さと濡れている感じ。
9首目、一日一日の変化はわずかだが、気づけば移り変わっている。
10首目、人間同士の関係のあり方は複雑で、刻々と変化していく。
2021年10月19日、私家版、600円。