「山學」は「やまがく」。
奈良県東吉野村で人文系私設図書館「ルチャ・リブロ」を開いている夫妻の日記(2018年12月〜2019年末)と書下ろしのエッセイを収めた一冊。
人文系の図書は自然科学系のそれとは違い、「新しさ」と研究上の価値が相関しない。だから「古い」というだけで「意味がない」ということにはならない。
お金に振り回されず、お金の多寡が思考のノイズにならないように。むしろ効果的なお金の使い道を考えたい。そのためには生活の一部に、商品化されない「手作りの世界」を持つことが必要となる。
里と山を対置させて考えた時、里で生きるのに必要な能力は「お金を稼ぐ力」であり、山で必要なのは「お金がなくても生きていける力」だ。
山奥に住んでいるとはいえ引き籠っているわけではなく、あちこち出掛けて多くの人と会っている。人との出会いや会話が次の展開や活動へとつながっていくのだ。読んでいるうちに何だか少し元気になって、自分もいろいろチャレンジしてみようという気分になってきた。
それにしても、「ルチャ・リブロ」遠いなあ。
2020年9月28日、エイチアンドエスカンパニー(H.A.B)、1800円。