2021年11月16日

モルゲンシュテルン(その1)

坂井修一『森鷗外の百首』を読んでいたら、クリスティアン・モルゲンシュテルン(Christian Morgenstern、1871‐1914)の詩の翻訳が出てきた。

かかる珠いくつか吹きし。
かかる珠いくつか破(や)れし。
ただ一つ勇ましき珠
するすると木(こ)ぬれ離れて、
光りつつ風のまにまに
國原の上にただよふ。

「月出」(Mondaufgang)という詩の一部で、パンの神が吹いたシャボン玉の一つが空に昇って満月になったという内容だ。原詩は『In Phanta's Schloß』(1895)のもので、鷗外の詩歌集『沙羅の木』(1915)に収められている。

モルゲンシュテルン!

という驚きがあった。もう30年近く昔の話になるが、私が大学(ドイツ文学科)の卒業論文で取り上げたのが、このモルゲンシュテルンの『パルムシュトレーム』という詩集だった。

当時、モルゲンシュテルンの邦訳はほとんどなく、苦労して書いた覚えがある。今も、生野幸吉・檜山哲彦編『ドイツ名詩選』(岩波文庫、1993)や種村季弘訳『絞首台の歌』(書肆山田、2003)、池田香代子訳『モルゲンシュテルンのこどものうた』(BL出版、2012)があるくらいではないだろうか。

1篇だけとはいえ鷗外が訳していたことを、迂闊にも知らなかった。

posted by 松村正直 at 08:38| Comment(0) | メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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