2021年11月12日

カワラナデシコと石竹(その2)

けれども、これは子規の間違いだったわけでもないようだ。子規は8月4日に「石竹」の絵も描いていて、「カハラナデシコ」とは明らかに区別している。


 石竹.jpg

(国立国会図書館デジタルコレクションの画像より)

さらに気になるのは、河野自身が2002年に次のような歌を詠んでいることである。

    子規記念博物館にて「草花帖」を求む
励まして絵筆励まして描きし子規カハラナデシコよき淡彩に
紅紫濃きと薄きを工夫してカハラナデシコ四輪を描く
たいせつなこの世の時間の一筆(ひとふで)の濃淡考へて置きしこの色
            河野裕子『庭』

この歌を詠んだ時点では、河野もこの花が「カハラナデシコ」であることに何の疑いも持っていない。それがどういう経緯で2009年の歌では子規の「間違ひ」と思うようになったのだろう?

posted by 松村正直 at 07:23| Comment(0) | 河野裕子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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