2021年11月11日

カワラナデシコと石竹(その1)

なでしこの画を一枚飾るゆゑ暮しの中に子規ありいつも
「カハラナデシコ」と子規直筆にあるなれどこれは石竹(せきちく)、赤紫の花
子規がなぜこんな間違ひをしたのかと百六年後のわたしは思ふ
            河野裕子『葦舟』

正岡子規が「草花帖」に花のスケッチを描いたのは1902(明治35)年8月のこと。8月7日の『病牀六尺』には「草花の一枝を枕元に置いて、それを正直に写生して居ると、造化の秘密が段々分つて来るやうな気がする」という有名な一文を記している。

河野はその「草花帖」の1枚、8月12日に描かれた「カハラナデシコ」を見て、石竹の間違いではないかと詠んでいるのだ。


 カハラナデシコ.jpg

(国立国会図書館デジタルコレクションの画像より)
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1288389

歌が発表されたのは「塔」2009年7月号だが、「百六年後」から計算すると2008年に詠まれた歌なのかもしれない。

日本の在来種であるカワラナデシコ(ナデシコ、ヤマトナデシコ)と中国原産の石竹(カラナデシコ)は、どちらもナデシコ科ナデシコ属の花でけっこう似ている。でも、河野は「なぜこんな間違ひをしたのか」と手厳しい。

posted by 松村正直 at 23:11| Comment(0) | 河野裕子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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