2021年10月26日

小林多喜二『蟹工船 一九二八・三・一五』


3月に小樽文学館で小林多喜二のデスマスクを見た。多喜二の勤務先であった旧北海道拓殖銀行小樽支店(現・似鳥美術館)にも行った。


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その流れで、この1冊。読んでみたら予想以上に良かった。プロレタリア文学という括りを外しても十分に味わえる内容のように思う。

視点があちこち動くので最初は読みにくく感じたのだが、群像劇として描いていることがわかると、すんなり作品世界に入っていける。

内地では、労働者が「横平」になって無理がきかなくなり、市場も大体開拓されつくして、行き詰ってくると、資本家は「北海道・樺太へ!」鉤爪をのばした。
北海道では、字義通り、どの鉄道の枕木もそれはそのまま一本一本労働者の青むくれた「死骸」だった。築港の埋立には、脚気の土工が生きたまま「人柱」のように埋められた。

「蟹工船」は北洋漁業に出る船が舞台だが、当時の北海道における蛸部屋や鉄道工事の実態も生々しく描かれている。

竜吉は警察で非道(ひど)い拷問をされた結果「殺された」幾人もの同志を知っていた。直接には自分の周囲に、それから新聞や雑誌で。それらが惨めな死体になって引渡されるとき、警察では、その男が「自殺」したとか、きまってそういった。

「一九二八・三・一五」には、凄惨な拷問シーンが何か所も出てくる。この作品を書いた五年後、29歳の多喜二はまさに自らが書いた通りの姿で亡くなったのだ。

1951年1月7日第1刷、2003年6月13日改版第1刷、
2020年4月6日第19刷、岩波文庫、700円。

posted by 松村正直 at 21:36| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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