2021年10月25日

佐藤モニカ歌集『白亜紀の風』

短歌研究社
発売日 : 2021-09-07

2017年から2021年までの作品310首を収めた第2歌集。

沖縄の豊かな自然や子育ての日々が多く詠まれている。また、ブラジルに移民した曾祖母や日系人の母など、自らのルーツに関する歌にも力があり印象に残った。

ベーグルを買つて帰れりゆふぐれは誰かに少し褒められたくて
幾度もたたまれちひさくなる街の片隅にある白き港は
ボゴール、ピーチ、ゴールドバレル市場にはささめきあへりパイナップルが
縦縞の夫と横縞の子を連れて花柄われの買ひ物たのし
家中の扉に油さしてゆく秋のこころは旅人に似て
夏の日はグンバイヒルガオ従へて川いきいきと流れてやまず
猫はまたやはらかき島この家に三つの島のある昼下り
窓磨きカーテン洗ふ一日なり心と窓は通じるやうで
サイタサイタサクラガサイタと暗唱す桜まだ見ぬ日系子女ら
浮遊する心は蝶に預けたり窓辺にわれと猫は並びて

1首目「ベーグル」が効いている。三句以下と付かず離れずの感じ。
2首目、地図の話のようだが、直前の歌の「産着」のことなのかも。
3首目、沖縄ならではの歌。パイナップルにも様々な品種がある。
4首目、洋服の柄に着目して詠んだのが面白い。夫も子も同じ扱い。
5首目、扉が軽く開け閉めできるようになると、心までも軽くなる。
6首目、川岸に多く咲いている。「従へ」という動詞の選びがいい。
7首目「島」の喩えが絶妙。丸まって眠っている姿を思い浮かべる。
8首目、窓やカーテンをきれいにすると心の風通しも良くなるのだ。
9首目、ブラジル移民の子であった母。桜のない地で桜を想像する。
10首目、自由に飛んでは行けない心の代わりに、蝶を眺めている。

2021年8月28日、短歌研究社、2600円。

posted by 松村正直 at 10:17| Comment(0) | 歌集・歌書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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