インドネシアのレンバタ島のラマレラ村では、手作りの木造船に乗って銛一本でマッコウクジラを仕留める伝統捕鯨が行われている。著者は1992年から4年かけて、初めてその漁の撮影に成功した。
昔ながらの方法で、マンタやジンベエザメ、クジラを捕獲する村人たち。漁は常に危険と隣り合わせで、怪我を負ったり船が沈んだり、死者が出ることもある。そんな彼らの生活に密着し、その生き方や自然観に触れる。
「自分たちは食うために必死に鯨と闘う。鯨も生きるために必死に抵抗する。どちらが勝つかは神様が決めることだ」
著者は鯨漁の撮影に成功した後も村に通い続け、今度は命を奪われる側の鯨の姿の水中撮影に挑む。
現在公開されている映画「くじらびと」の原点がここにある。
2011年2月22日、集英社新書、780円。